子守唄

ねんねんころりよ おころりよ

2/27

 

大学の退学届を出した。ここまで長かった。

1月末と決められた提出期限をとっくに過ぎ、震えながら学生課に電話をかけたら4月になる前に出してくださいねとのことで、まだ期限はあるにはあるけどもう迷うこともないのでとっとと書いた。今日のようによく晴れた日のほうがいいと思った。なんとなく。

一身上の都合、ではどうやらだめらしく、理由は詳しく書けとくどいほど指示があったので、進路変更・就職のためと書いた。大学を辞めたら就職するしかなかったので就職しただけだが、それらしい文章になった。いつも理由は後からついてくる。

親とは使う印鑑が別のほうがいいだろうと思って別々の判を押した。こんなに違う人生なのに同じ名字なのがなんだか変な感じがした。1年前は退学を巡って親と死闘を繰り広げていたので、並んで和やかに退学届を書いているのが面白かった。1年経てば笑い話、とまではいかないが、自分のことは最後には自分が決めるしかないのだと改めて思った。

物件の審査のための書類が今日送られてきた。大学に落ちたからここに行くしかない、続けられないから辞めるしかない、大学を辞めるから仕事に就くしかない。そうするしかないと思ってここ数年はずっと生きていて、最近ようやく自分の意思でやってみたのが物件探しだった。焦っていると散々言われたけど、もうよかった。ここまでも好きに生きているようにみえているかもしれないがそんなことはなくて、でもやっと好きなようにできるかもしれなかった。失敗しても後悔してもまあそんなこともあるよねと、やっと思えるかもしれなかった。

他人よりも傷をたくさん作って、それでも何回やってもこうなってしまうんだろう。生まれ変わってもこの人生がいいとは思えないけど、やっていくしかないのだろう。誰が許さなくても、わたしは何度だってスタートを切る。そしてまた少し先で振り返って、ここまで長かったなあと笑うのだ。こんなふうに。