子守唄

ねんねんころりよ おころりよ

8/22

 

飲みに行った次の日はいつも昨日の飲み会を反芻して終わる。同僚と飲むのが一番楽しい。

疲れた。誰の顔色も窺いたくない。誰の機嫌も損ねたくない。母の機嫌がいいと嬉しくて、嬉しいあとに少しだけ泣きそうになる。でも別にいつ出ていったっていいんだからとまじないのように思い返す。

ここ何日か、なにかと理由をつけて彼氏の電話を断り続けていたので今日はちゃんと電話に出た。彼氏が強いられている理不尽な会社のルールを聞かされていちいち怒るわたしに彼氏も疲れているのだろう。わたしも自分に疲れている。

わたしを振り回している上司が電話で「俺も王様になってみたいよ」と言っているのを聞いた。よかったな、お前はもうすっかり裸の王様だよ。もう少ししたらわたしがちゃんと教えてやるからそれまでせいぜいそこでYahooニュースでも見ながら無駄口を叩いていろ。

妹は今日もトイレと風呂以外で唯一鍵のある父の書斎に籠もっている。誰にもノックされない、わたしの精神が脅かされない、わたしだけの楽園にずっと憧れていた。わたし以外の全員がそれぞれどこかにその楽園を持っている気がして、全員を憎んでいる。