子守唄

ねんねんころりよ おころりよ

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母に名刺入れをもらった。可愛くて使いやすそうでわたしによく似合う色。多分わたしには手が出せない値段の、良い名刺入れ。この人は昔からこうだ。

名刺入れは去年から探していたけれど、自分が納得いくものをとことん探して、本当に気に入ったものが見つかったらいくらだろうと思い切って買うつもりだった。それが最近の楽しみだった。家族にも彼氏にも伝えていたつもりだった。念押しでもあった。

昔から母は自分があげたいものをあげたい人だ。相手に使ってほしいものを、自分の気持ちだけであげてしまえる人。羨ましくないと言ったら嘘だけど、そうはなるもんかと思って生きてきた。最近彼氏にも同じようなことを言われた。時計を選んでほしいらしい。彼氏が使う時計なのに、わたしが選んだものならなんでもいいらしい。彼氏はうちの母みたいな人が好きなんだろうな。わたしじゃみんなダメなんだろうな。

こんなに何回も思うのに、やっぱり誰にも何も言わないのは難しい。寂しいんだろうか。欲しいものひとつ口に出すのをやめて誰にも言わずにたった一人で探して、ついに運命の一つを手に入れることができたら、幸せなんだろうか。