子守唄

ねんねんころりよ おころりよ

元彼とのLINEを見返して死んだ

昔の恋人とのLINEのやりとりを見返していた。禅問答のようだった。二人とも自分の欲しい言葉を相手に言わせようとしていた。宗教が違ったんだと思う。彼と付き合っているときは自分が欠陥人間だと思っていた。ちゃんとしていない自分を見せるのがいつも怖かった。

彼のことは、一から十まで分からなかった。馬鹿正直に一から十まで分からないことを聞いたら、彼によく悲しまれた。人の気持ちはわかって当然で、それを直接聞いてはいけないと言われて信じ切っていた。君は本当に僕の気持ちをわかってくれないねって何度も言われて、でもどうしても察することはできないから彼用のマニュアルを作っていた。こう言われたらこう返す、そのテンプレートを集め続けた。これならうまくいくと思った。それでも彼が望む答えを返せたことはきっと一度もなかった。


二人の世界が違うことに、きっと彼が先に気づいた。


もう後戻りできないほど好きになってから二人の信じるものが違うことに気がついてしまったら、どうすればいいのだろう。二年付き合ったけど最後の二ヶ月は会わず、別れ話は電話だった。ちょうど今くらいの時期で、電話をするために外に出て、風が冷たいことに初めて気がついた時、もう私の知っている彼はたぶんいないんだと思った。月が綺麗だった。別れるという実感がなくて、心の一部がなくなってしまう気がして本当に辛かったけど、あんなに流したはずの涙はやけに早く乾いた。


それから何年か経って、私はやっぱり努力しないと人並みになれないと知った。それでもその努力を見ていてくれる人がいるということは、今の恋人と付き合うまで知らなかった。完全に分かりあうことは不可能でも、分かろうとしている姿勢を認めてくれることがこんなに嬉しいということを、今の恋人は教えてくれた。この人のために、この人に愛される自分のために、誠実でありたいと思った。

 

今日もそれぞれの世界で生きている。