多田なのさんの歌集【拝啓きみのキーホルダーになりたかった】を読んで評を書こうとしたら、思いのほか長くなってしまったので、こちらで公開します。歌集とは、短歌の作品集のことです。ちなみに書き進めるうちに評ではなくなってしまいましたが、どうか読んでください。そして、これを読んで気になった方はぜひ多田さんの歌集を読んでください。本当に良いので。
日々の暮らし。
恋人が隣にいない時も、心の中にいる恋人と話せばさみしくない。
冷蔵庫に寄りかかるのは自分の体重が重いから。恋人と見ない花火も綺麗だと思えるのは、恋人と見た花火が綺麗だったから。
自分以外の人が恋人を見るのが怖い。恋人と話すのが怖い。恋人を想うのが怖い。
綺麗な牢屋の中にずっといたいけど、閉じ込められてる恋人を見たくない。自分なんかなくなったっていいのに、恋人が1ミリでも削れるのには耐えられない。
どこか冷めてるように見えるのは、運命なんかもう信じていないからかもしれない。世界のぜんぶを捨ててふたりでいたっていいのにすこしだけ怖くて、もうこどもみたいにまっすぐ信じ切ることはできなくなってしまった。
どこに行ったって恋人が好きで、何をしてたって恋人が好き。どうか恋人が毎日心から笑えますように。何にも傷つけられませんように。愛している。愛している。一つだけ願うなら、いつもそばで、ただ恋人を、恋人が見る景色を、ただ見ているだけでいいから、
あなたのキーホルダーになりたかった。
拝啓きみのキーホルダーになりたかった
https://drive.google.com/open?id=1KKJwCmUqpCJSHzawSo0J8k6GwxGQDuYO
著者:多田なの(Twitter @ohta_nano)