子守唄

ねんねんころりよ おころりよ

Something New

昔通ってたギター教室の先生がクソッタレな世の中のせいで首を吊って、私はクソッタレな世の中でもなんとか生きていくために音楽をやってて、先生もそういう人だと思っていた。
もっと連絡をすればよかったとか、ちゃんと顔を見せればよかったとか、そういう月並みな後悔はなくて、ただただ絶望した。

教室には機材がたくさんあった。そこかしこにギターが置いてあって、壁にもたくさんぶら下がっていた。外から覗くと先生はいつも背中を丸めてギターを弾いていた。2人で向かい合ってレッスンをするので精一杯の広さで、教室がなくなったあと外から覗いてびっくりした。こんなに広かったんだ。

あの人を救えなくて何が音楽だと思った。今まで覚えてきた音楽を全部忘れてしまいたくなった。メロディを口ずさむのも嫌だった。

家族もギターも失った先生を、音楽すらも見放した。先生があんなに愛した音楽に、先生はとうとう最後まで愛されなかったんだ。
天国で先生はギターを弾いているだろうか。もうやめちゃっただろうか。
先生のおかげで今でもギターが大好きですなんて言ったら、嫌な顔をするだろうか。思い出したくもないだろうか。
忘れたい日々だとしても、私は楽しかったんだと伝えてもいいだろうか。

しばらくギターを弾きたくなくて、創作活動に力を入れることにしたけれど、ひとつのものに乗っかるのは怖い。音楽も絵もできなかった私がやっと見つけたものを、取り上げないで欲しいと思う。ずっと両腕に力を込めてペンひとつを大事に抱えている。

何かに狂えた人生は幸せだっただろうか。