子守唄

ねんねんころりよ おころりよ

私信

ここが終着点かもと思う。騙し騙し走ってきたけどついに車輪が止まりそう。きっと初めからずっと止まりたかった。
君がいると決心が鈍る。生きていけるかもと思ってしまう。一人の夜はいつもより寒いけど、なぜかほっとする。苦しみも後悔も全部私のものにできる。いつも半分どころか私ごと背負おうとするから。
人生どん詰まりだと思ったのにあなたがいたんだって君が泣いたとき、その髪を撫でながら鴨川のことを思っていた。目が覚めてあなたがいなかったらどうしようなんて言わせるつもりじゃなかったのに、誤算だった。そんなに誰かの中に私を残すつもりじゃなかった。鴨川のほとりを歩いて、もうここに沈もうかなって呟いた私を精いっぱい笑い飛ばした君の目が潤んでたの、気づいてた。揺れてるのは鴨川に映る街灯なのか自分の瞳なのか分からなくなって、その手を握ってしまった。いつもと同じ冷たい手に甘えてた。私なんかでは心が動かないはずだって、期待していた。あたためてあげるなんて言いながら救われていたのは自分だった。
あんなに傷ついたのにどうしても人間を嫌いになれなくて、どうしても愛し合うことだけはやめられなくて、やっぱり同じことを繰り返してしまった。隠し通そうと思っていたはずなのに、どうしても見せたくなってそれでいいって言われたくなって、欲望のままに中身をほとんど見せた。人の一大決心をなんでもないことのように受け止めてたのは今思えばポーカーフェイスだったのかもしれないね。第六感があるとすればこれだと思った。この人ならいいかもっていう勘。ご丁寧に作品もブログもペンネームまで教えて、私はやっぱり見つけて欲しかったのかもしれない。インターネットだけを信じて書いていた頃、公開しなかった文章の方が多かったけど、あの頃と同じように誰か見つけてって。
何を考えて書いてるのって聞かれたとき何も答えられなかったのは、それしかなかったから。私を見つけてもらうためには面白いことを書くしかなくて、それしか考えてなかったから。注目されれば誰か一人くらい分かるよって言ってくれる人がいて、結局人間に愛されたくて、だから今はもう書く必要なんかないのかもしれない。
泣いたのは、一生懸命だね、必死だねって言われたから。必死で愛される自分に気づいたから。ここまできても愛することより愛されることを一生懸命考えてる自分に気づいて、惨めになったから。いっつも首筋にキスマークをつけるのは、忘れられたくないから。私のことは見捨ててなんて言いながら、誰よりそばにいたいと欲張ってるから。過去を見てしか生きられないのに。未来予想図なんていつから白紙のままだろう。
何を知っても好きでいると思うよ。それが絶望にしかならなくても、君もそうであるように。あんなに言われたのに、夢にしてごめんね。でも、嘘じゃなかったよね。

2人のどん底で会えてよかった。