子守唄

ねんねんころりよ おころりよ

これはほとんど

昔はよく本を読んでいた。一番読んでいたのは小学生の頃だと思う。朝学校に着いたらまず図書室に行き、その日読む本を借りる。2時間目が終わるころには朝借りた本はもう読んでしまっていて、20分の長い休み時間を使って図書室に行く。また違う本を借り、昼休みにまた図書室に行く。帰る頃にはそれも読んでしまって、今晩家で読む本を物色しにまた図書室へ寄って帰る。こんな生活をずっとしていた。小学校の頃の休み時間なんてそんなになかったはずなのに、なぜか日に何冊も読んでいた。

両親とも本が好きだったのも大きかった。父親の書斎に入ると右も左も天井まで本棚があって、その中にこれでもかと本が詰め込まれていた。自分の背の届く範囲の本しか読んではだめだと言われていたけれどそんな言いつけを守るはずもなく、椅子によじ登っては面白そうな本を片っ端から読んでいた。本の中では男の子にも綺麗なお姉さんにも猫にも魔法使いにもなれた。何回も全く違う人生を生きることができた。それが何より楽しかった。

文章に刺され、文章に殴られ、そして文章に救われてきた。いまこんなに文章に固執しているのは、昔の読書体験が忘れられないんだと思う。誰かを救いたいなんて大層な志ではないけれど、自分がそうされてきたように、私も少しでも何か届けたい。私の言葉で傷ついてほしい。

これはほとんど祈りだろうか。

それともゆるやかな呪いだろうか。