子守唄

ねんねんころりよ おころりよ

まぶたの奥で

気がついたら夏だった。

肌にじっとりまとわりつくような暑さで、蝉の声が遠くで聞こえている。天気が良くて、木漏れ日がきれいで、麦わら帽子のにおいがして、こんな帽子持ってたっけ?と思った。先を行く人は白いシャツを着てて、顔は見えないけどなぜか知り合いだとわかった。ついていかないといけない気がして、草むらをかきわけて進む背中を必死に追いかけた。

 

いつの間にかこたつで寝ていた。着込んだフリースの下で汗をびっしょりかいていた。蝉の声は、つけっ放しのテレビからだった。いつも真反対の季節に憧れて、勝手だなと思う。

いつも思いを馳せるのは過去の夏だ。今はもうまぶたの奥でしか会えない人たちが、あの夏にはいた。会おうとすれば会える人もいるけれど、会わないほうがいいと思った。わたしの記憶の中だけで輝けばいい。わたしの頭の中でだけ、永遠であればいい。

 

夏には永遠が似合うと思う。線香花火を持ったとき、どうしてずっと続くことを祈ってしまうのだろう。数十秒だけ永遠を祈って、夏はまた来年も来る。分かってるのに、なぜ夏の終わりはいつもこんなに寂しいんだろう。やっぱり終わりを信じてしまうからだろうか。夏の終わりを信じて、冬に憧れてしまうから、やっぱり夏は永遠にはなれないのだろうか。

 

しけってしまった花火は何回火をつけても火花を散らすことはなかった。冷たい風が、線香花火の燃えかすを飛ばしていった。