子守唄

ねんねんころりよ おころりよ

重ければ重いほどいいと信じている。

 

立て続けに心に負荷がかかって、壊れかけてしまった人がいた。仲良くしていたけど自分にできることは呼び出されて話を聴くくらいしかなかった。その目が何を見ていたのかは、煙草の煙でよく見えなかった。

焦ってしまって、でも何も言えなかった。わたしはこの人の恋人ではない。この人を抱きしめるのは、わたしの役目ではない。でもこの人をここに留めておくなにかが欲しかった。そうしないといつの間にか遠くに行ってしまうと思った。たまたま持っていた歌集を貸した。好みかどうかはどうでもよかった。それをわたしに返すためにここにいてくれればよかった。胸に押し付けて、顔も見ずに逃げ帰った。

 

何日かして、歌集を読んだ、良いと思った、同じ筆者の歌集があるならそれも読みたい、というメッセージがきた。

なれただろうか、厄介な重りに。あなたをここに留めておく、錨に。