子守唄

ねんねんころりよ おころりよ

290124

ずっと何かを探している。

 

一晩中部屋の中で息を潜めていたら、油断した月が居眠りをした。起こさないようにドアを開けて、白い息を吐きながらコンビニに向かった。

 

どうしようもない虚しさを紛らわせるものを探して、店内をさまよう。ミンティアはもう食べ飽きた。ガムもいまいちだ。唐揚げはちょっと重たすぎる…と、レジ裏の煙草と目が合った。なぜかドキドキして店内を一周した。その辺の適当なお菓子を手に取って、レジに向かう。いかにもついでのように、聞いたことのある銘柄を言ってみた。

 

超えないように気をつけている線はその気になれば案外あっさり超えてしまえる。法律だって所詮そんなものなのだ。お気に入りの服が窓際に干してあったけど気にならなかった。今までいい匂いのお香とカラフルなキャンドルしか知らなかったライターで、火をつけた。最初はむせるらしいので注意深く吸った。吐いた。吸った。鼻に抜けるように吐いてみたら煙草の味がした。これが煙草の味なのだと思った。吸った。下を向いて煙を吐いたら鼻がツンとして、むせた。また吸った。吐いた。持つ手が熱くなってきたので、目の前の空のキャンドルホルダーに突っ込んだ。まだ燻る火種を冷めたコーヒーをかけて消した。

 

吸って吐き 吸って吐き 短くなればもみ消して新しいのに火をつける。無心で繰り返した。ふと我に返るとガラス製のキャンドルホルダーはずいぶん汚くなってしまった。灰と吸い殻とコーヒーにまみれるために生まれてきたわけじゃないのに。綺麗なキャンドルだけ知っていればそれでよかったのに。

 

 酒を飲んでみても煙草を吸ってみても何も変わらない。急に愛してくれる人が現れるわけではない。お前が好きだと何人に言われても少しも安心できなかった。いっそその中の誰かの胸に飛びついて、涙が涸れるまで声をあげて泣けたら楽なのだろうか。

 

ペンを自由に持てるようになっても、私はこんなことしか言えない。