子守唄

ねんねんころりよ おころりよ

愛のこと

愛のこと。愛のことについて考える夜は、いつも寒い。単に人肌が恋しいのかもしれない。布団の中で丸まってぶるぶる震えながら書いていると言えば詩的だがそんな忍耐力はなく、あっさりエアコンをつける。こたつもつける。ついでにあったかいお茶も入れる。ぬくぬくになったところで、落ち着いてもう一度愛のことを考える。

愛のこと。スマホでちまちま文字を打っていたら、ふと剥げたネイルが目についた。剥げたネイルは何も手入れをしてない爪よりずっと汚く見える。少しでも綺麗になりたいと頑張った証なのに、何もしてない方が良く見えるのはなんでだろう。自分のためじゃなかったからだろうか。

愛のこと。湯のみのお茶がなくなって、もう一度入れるために立ち上がる。キッチンに置いてある冷蔵庫にはホワイトボードが掛かっていて、綺麗な筆記体で男の名前が書いてある。雑誌の付録か何かの安いホワイトボードに、もう何ヶ月もその名前は居座っている。すぐ消さないと文字が消えなくなるなんて知らなかった。いつまでも痕跡が消せなくて、見て見ぬ振りをしている。

愛のこと。昔読んだ本に、愛とは与えるものではなく、与えたいという気持ちを相手からもらうことだと書いてあった。なるほど確かにそうかもしれない。では今まで愛してばかりだと思っていたわたしは、実は貰ってばっかりだったのだろうか。みんなわたしに与えすぎて、疲れてしまったのだろうか。じゃあなんで今わたしの手元には何もないのだろう。どこに行ってしまったのだろう。与えたものも貰ったものも、あの時の気持ちも確かに聞いた言葉も、跡形もなく消えてしまった。

愛のこと。ふと窓の外が騒がしくなった。カーテンを少しだけ開けて外を覗く。そのとき初めて、雪が降っていることに気がついた。窓を開けて手を伸ばす。雪が手のひらに落ちては消え、落ちては消えるのを、ずっと見ていた。

 

そうしてしんしん降る雪が

世界を白く染めるころ

わたしのところに一通の

愛の手紙がまた届く